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「負けた相手が悪かった」。こんなフレーズがお似合いの馬がいる。プリンシパルステークス3着からここへ挑むイェッツトだ。先着を許したコズミックフォースはダービー3着馬。2走前に負かされたブラストワンピースはダービーで2番人気に支持されたように、世代屈指の馬たちと接戦を演じてきたのがこの馬である。そのような戦歴ゆえに上位人気が予想され、これまでと比較すると今回はメンバーレベルが大きく下がる。ここでは上位争い必至とみるのが妥当かもしれない。
イェッツトは常に人気薄で好走してきたように、厩舎も血統も地味なタイプ。しかし、持ち主は大馬主・近藤英子オーナーなのだから、おそらく虎視眈々とこのレースを狙っていることだろう。イェッツトは勝利できる器なのか？ 騎手や前走内容などさまざまな角度からデータ分析を行っていきたい。
目次
[厩舎]いきなり向かい風 厳しい条件の金成厩舎
今年のラジオNIKKEI賞へ出走予定の厩舎別に福島芝1800mのデータを見てみよう。イェッツトが所属する金成厩舎は勝率、連対率ともにゼロと結果を残せていない。競馬場別に見ても複勝率は18％で、東日本の中で最も低い成績だ。ただ、福島を一括りにすれば単勝回収率は200％を超えているように、破壊力を秘めた舞台と言い換えることもできる。軸向きではないものの、逆転の可能性を秘めている1頭と言えるかもしれない。
| 調教師 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 |
|---|---|---|---|---|---|
| (美)堀井雅広 | 22% | 28% | 50% | 260% | 156% |
| (美)宗像義忠 | 18% | 18% | 32% | 179% | 74% |
| (美)萩原清 | 20% | 50% | 60% | 86% | 112% |
| (美)手塚貴久 | 13% | 20% | 20% | 59% | 36% |
| (美)木村哲也 | 15% | 15% | 23% | 43% | 30% |
| (栗)奥村豊 | 33% | 33% | 33% | 340% | 90% |
| (栗)高橋義忠 | 0% | 22% | 44% | 0% | 321% |
| (美)奥村武 | 0% | 11% | 11% | 0% | 35% |
| (美)栗田徹 | 0% | 8% | 8% | 0% | 153% |
| (美)金成貴史 | 0% | 0% | 8% | 0% | 44% |
| (栗)杉山晴紀 | 0% | 0% | 0% | 0% | 0% |
※2015年以降の集計結果
| 場所 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 |
|---|---|---|---|---|---|
| 札幌 | 13% | 16% | 23% | 139% | 50% |
| 函館 | 10% | 29% | 48% | 89% | 169% |
| 福島 | 5% | 8% | 18% | 202% | 84% |
| 新潟 | 5% | 12% | 22% | 163% | 111% |
| 東京 | 8% | 17% | 24% | 61% | 61% |
| 中山 | 9% | 19% | 27% | 62% | 98% |
| 中京 | 2% | 11% | 15% | 8% | 122% |
| 京都 | 0% | 7% | 21% | 0% | 257% |
| 阪神 | 4% | 12% | 12% | 55% | 38% |
| 小倉 | 4% | 4% | 28% | 29% | 62% |
※2015年以降の集計結果
次に、騎乗が予定されている蛯名騎手との相性はどうだろう。勝利数順で考えれば上から数えたほうが良い騎手で、今回のメンバーならば期待された鞍上と考えていいのではないだろうか。しばらく結果が出ていないが、2008年に6番人気ノットアローンで2着、2009年には5番人気のストロングガルーダで勝利している。人気の予想されるイェッツトとのコンビなら久しぶりの勝利は十分に期待できるだろう。
| 騎手 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 |
|---|---|---|---|---|---|
| 戸崎圭太 | 21% | 32% | 46% | 79% | 81% |
| 柴田大知 | 6% | 14% | 25% | 45% | 89% |
| 横山典弘 | 14% | 27% | 41% | 64% | 89% |
| 田辺裕信 | 11% | 22% | 32% | 133% | 105% |
| 丹内祐次 | 4% | 23% | 35% | 145% | 154% |
| 蛯名正義 | 6% | 16% | 24% | 59% | 79% |
| 勝浦正樹 | 11% | 28% | 33% | 33% | 266% |
| 伊藤工真 | 6% | 12% | 21% | 51% | 113% |
| 丸田恭介 | 7% | 10% | 13% | 120% | 83% |
※2015年以降の集計結果
［血統］ここで結果を出すか!?いまだ馬券圏内のないカンパニー産駒
現役時代はマイルチャンピオンシップや天皇賞（秋）などで活躍したカンパニーだが、種牡馬になってからは苦戦しているというデータが出た。競馬場別で見ても良し悪しがハッキリ出ておらず、総じて低調な成績というのが答えになるかもしれない。今回の舞台では0-0-0-10と未だに馬券圏内なし。レースのデータ分析記事で触れたが、福島芝1800mはディープインパクト産駒の成績が目立つコース。カンパニー産駒が合わないというデータは、頷けるところである。
| 種牡馬 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 |
|---|---|---|---|---|---|
| ディープインパクト | 12% | 24% | 32% | 87% | 75% |
| マンハッタンカフェ | 13% | 17% | 22% | 46% | 33% |
| ハービンジャー | 6% | 10% | 24% | 22% | 63% |
| ダノンシャンティ | 23% | 39% | 39% | 203% | 107% |
| ゼンノロブロイ | 5% | 14% | 19% | 24% | 46% |
| ヴィクトワールピサ | 11% | 21% | 26% | 200% | 71% |
| ブレイクランアウト | 25% | 50% | 75% | 350% | 307% |
| ディープブリランテ | 8% | 17% | 17% | 36% | 116% |
| ノヴェリスト | 17% | 33% | 33% | 31% | 58% |
| エイシンフラッシュ | 11% | 11% | 22% | 30% | 30% |
| バゴ | 0% | 9% | 18% | 0% | 61% |
| カンパニー | 0% | 0% | 0% | 0% | 0% |
※2015年以降の集計結果
［騎手］福島は得意！蛯名騎手なら勝利へ導く!?
蛯名騎手の競馬場別成績を見ると、中山と並んで福島は得意な競馬場と言えそうだ。小倉の成績も良いように、小回り競馬場で好成績を残している。金成厩舎とのコンビでは昨年の札幌記念をサクラアンプルールで勝利しており、ここでもこのコンビに期待するファンは多いだろう。
ただ、福島競馬場芝コースのなかで、1800mに限定すると勝率は今ひとつ。複勝率が高いことから得意でも不得意でもないと判断するといいかもしれない。アタマまで突き抜けるというよりも、きっちりと馬券圏内に入ってきそうな雰囲気が漂う。
| 場所 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 |
|---|---|---|---|---|---|
| 札幌 | 7% | 17% | 25% | 106% | 58% |
| 函館 | 5% | 14% | 27% | 18% | 50% |
| 福島 | 10% | 17% | 25% | 56% | 78% |
| 新潟 | 6% | 14% | 26% | 54% | 67% |
| 東京 | 8% | 16% | 25% | 68% | 74% |
| 中山 | 10% | 20% | 27% | 63% | 71% |
| 中京 | 5% | 14% | 18% | 12% | 52% |
| 京都 | 7% | 7% | 12% | 82% | 40% |
| 阪神 | 6% | 12% | 21% | 44% | 43% |
| 小倉 | 25% | 25% | 42% | 62% | 85% |
※2015年以降の集計結果
| コース | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 |
|---|---|---|---|---|---|
| 福島・芝1200 | 9% | 15% | 18% | 53% | 36% |
| 福島・芝1800 | 8% | 15% | 27% | 25% | 65% |
| 福島・芝2000 | 11% | 16% | 26% | 64% | 130% |
| 福島・芝2600 | 17% | 17% | 33% | 193% | 76% |
※2015年以降の集計結果
［馬主］アンビシャス以来の勝利を狙う近藤英子オーナー
プリンシパルステークスとラジオNIKKEI賞を連勝したアンビシャスは、イェッツトと同じ近藤英子オーナーだった。今年は自身が所有したカンパニー産駒でこのレースに挑む。種牡馬カンパニーの価値を高める上でも、この馬に重賞を勝たせたいと思っていることだろう。近藤オーナーの成績を競馬場別に見ると、福島での良績が目立つ。同じローカルの新潟では0-0-0-7とまったく結果が出ていないだけに、福島で勝負してくる可能性は高そうだ。
| 場所 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 |
|---|---|---|---|---|---|
| 札幌 | 20% | 40% | 40% | 80% | 82% |
| 函館 | 0% | 0% | 0% | 0% | 0% |
| 福島 | 20% | 30% | 50% | 48% | 123% |
| 新潟 | 0% | 0% | 0% | 0% | 0% |
| 東京 | 15% | 23% | 39% | 67% | 104% |
| 中山 | 14% | 36% | 43% | 210% | 107% |
| 中京 | 4% | 17% | 26% | 34% | 61% |
| 京都 | 7% | 11% | 20% | 31% | 45% |
| 阪神 | 16% | 26% | 34% | 170% | 92% |
| 小倉 | 13% | 39% | 52% | 188% | 188% |
※2015年以降の集計結果
近藤オーナーと蛯名騎手の組み合わせは、集計期間中での出走はイェッツトのみで未勝利。そろそろ勝利が欲しい頃だろう。金成厩舎は関東だと菊沢厩舎、奥村武厩舎に次いで3番手くらいの扱いを受けているように感じる。蛯名騎手同様に金成厩舎も管理馬はイェッツトのみ。ここで結果を出して、期待馬の預託につなげたいと考えていてもおかしくないだ。
プリンシパルステークスでは着差なしの3着とあと一歩でダービー出走が叶っていた。そのリベンジになるように、陣営も良い準備をしてくるのではないだろうか。
［前走］プリンシパルステークス組の評価は？
惜しくもプリンシパルステークスで敗れ、ここに駒を進める馬は多い。馬券圏内に入った馬が過去10年で最も多いローテーションなのだ。近年上位に評価されてラジオNIKKEI賞に進んだ馬は以下の通り。
プリンシパルS着順→ラジオNIKKEI賞着順
イェッツト：3着→？
ゼーヴィント：3着→1着
アンビシャス：1着→1着
カフナ：3着→3着
クォークスター：2着→2着
プリンシパルステークスの着順と同等の走りをできることが多く、着順を落としたのはミエノワンダーとローレルブレットの2回のみとなっている。この2頭は4番人気、6番人気と上位人気ではなかったので、イェッツトの当日の人気が気になるところだ。負けた相手と接戦だったことを考えれば、きっちり走ってくる可能性が高そう。また、3着に負けたことで今回は54キロの斤量で出走できる。これは大きなアドバンテージになるだろう。
［前走人気］巻き返せるか!?厳しい前走人気薄
イェッツトの過去の戦歴を見ると人気薄で好走し、人気を背負って凡走する形になっている。好走したときはいずれも6番人気だったように、プレッシャーのかからない立場の出走のほうがいいのかもしれない。今回は上位人気に支持される可能性が高く、心配な要素と言えそうだ。
新馬戦では1800mを勝利し、距離を延ばすごとに着順を落としている。敗れたゆりかもめ賞は距離が長かっただけと判断することもでき、距離短縮になるこのレースでパフォーマンスを上げる可能性は高い。データで見ると前走6～9番人気は相性が悪く、勝ち切れていないため、このあたりをどう扱うか重要になりそうだ。
| 前走人気 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 |
|---|---|---|---|---|---|
| 前走１人気 | 19% | 27% | 35% | 105% | 82% |
| 前走２人気 | 6% | 11% | 17% | 126% | 53% |
| 前走３人気 | 17% | 17% | 25% | 185% | 61% |
| 前走４人気 | 0% | 15% | 15% | 0% | 43% |
| 前走５人気 | 0% | 0% | 0% | 0% | 0% |
| 前走6～9人 | 0% | 5% | 20% | 0% | 144% |
| 前走10人～ | 6% | 14% | 14% | 48% | 79% |
※直近10年の集計結果
［馬体重］出来ればプラス体重で！大幅増はむしろ歓迎
前走は470キロでの出走になったが、このままの馬体重だと勝率2％の厳しいデータに阻まれてしまう。もし前走から10キロ以上のプラスで出走となれば、評価もプラスに考えていい。大幅な馬体重の増減は本来ならば嫌われる現象だが、イェッツトにとって、勝利の可能性を手繰り寄せる貴重な要素になるのだ。変わらない馬体重のまま出走となった場合は、馬券圏内はあってもアタマは厳しいと評価するのが妥当かもしれない。
| 馬体重 | 勝率 | 連対率 | 複勝率 | 単回収 | 複回収 |
|---|---|---|---|---|---|
| 400～419kg | 0% | 0% | 50% | 0% | 315% |
| 420～439kg | 17% | 17% | 25% | 228% | 102% |
| 440～459kg | 3% | 9% | 22% | 22% | 152% |
| 460～479kg | 2% | 12% | 16% | 5% | 45% |
| 480～499kg | 12% | 21% | 21% | 127% | 77% |
| 500～519kg | 0% | 0% | 8% | 0% | 18% |
| 520～539kg | 22% | 22% | 33% | 111% | 122% |
| 540～ | 0% | 0% | 0% | 0% | 0% |
※直近10年の集計結果
［まとめ］馬券圏内はあっても勝つためのデータは足りないか
厩舎成績や血統でみるとマイナス評価になるデータが揃ってしまった。プリンシパルステークス組の相性が良い点や小回り得意の蛯名騎手の乗り方で不利なデータを突破できるのか？ そのあたりが勝負のカギを握りそうだ。
ディープインパクトの庭とも言えるこの舞台で、それとは真逆の結果しか出ていないカンパニー産駒が勝つためには、行く手を阻む大きな壁を乗り越えなければならない。ただし、ここまでに戦ってきた相手を考えれば、これらのデータをすべて打ち破り、楽勝する可能性は十分にある。
