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香港ヴァーズの取扱説明書

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こんにちは。編集部のJです。

今回取り上げるのは12月に行われる香港国際競走の一つ、香港ヴァーズです。シャティン競馬場の芝2400mで争われます。

香港国際競走は同日に4つのカテゴリーのG1が行われる暮れのビッグイベントで、世界のホースマンたちにとって帯同馬を伴って遠征ができるというのは、大きなメリットです。

近年では、同じ距離で行われるジャパンカップが、香港ヴァーズとの招待馬争奪戦に負けて、香港にいい馬が流れている印象が強くあります。上記のようなことが、その理由の一つになっているならば、JRAもそろそろ複数G1を同日に開催することを、真剣に検討をしてもいいと思うのですが…

ちなみに、香港ヴァーズの「ヴァーズ(Vase)」とは、英語で「花瓶、装飾用のつぼ」のことです。優勝馬のオーナーに贈られるつぼ型のトロフィーが、そのままレース名になったと推測されます。

香港ヴァーズの基礎知識

まずは、香港ヴァーズの概要からです。

香港ヴァーズの歴史

香港ヴァーズは、香港国際カップ(現在の香港カップ)、香港国際ボウル(現在の香港マイル)に続く香港で3番目の国際レースとして、香港国際ヴァーズの名で1994年に創設されました。第一回目から芝2400mで行われていて、4つの香港国際競走では、このレースだけ創設時からの距離が変わっていません。

香港ヴァーズの過去の優勝馬には、1996、97年に連覇したイギリスのルソー、四ヶ国でG1を制してジャパンカップにも参戦したイギリスの女傑ウィジャボードなど、世界を股にかけて活躍する馬も多く見られます。

96年にいきなり国際G2として重賞格に昇格。99年にレース名が香港ヴァーズになり、2000年に国際G1になりました。

芝2400mというのは、香港で行われるレースの最長距離です。重賞も香港ヴァーズのほかに、香港チャンピオンズ&チャターカップ(G1)とクイーンマザーメモリアルカップ(G3)が行われているだけです。

香港ヴァーズの賞金

2017年の香港ヴァーズの賞金総額は、1800万香港ドル。およそ2憶5200万円です。1着賞金は1026万香港ドルで、およそ1憶4300万円です。17年は4つの香港国際競走では最も低い賞金になっていました。

しかし、2018年に香港国際競走の賞金がアップされたことで、賞金総額は2000万香港ドル、およそ3憶円になり、香港スプリントと同額の賞金になっています。

香港ヴァーズの観客数

香港ヴァーズを含む香港国際競走の開催日の観客は、2017年がおよそ9万5000人。16年には10万人を超える観客数を記録しています。

香港ヴァーズは香港国際競走4レースのオープニングレースになっていて、スタート時間は現地時間の14時(日本時間は15時)。全10レースあるうちの第4レースとして組まれていました。2017年の香港国際競走当日の第1レース発走は現地時間の12時25分でした。

香港ヴァーズのレコード

香港ヴァーズのレコードタイムは、1994年にフランスのレッドビショップがつくった2分25秒10。第一回目に出たレコードタイムが、20年以上経ってもいまだに破られていません。

シャティン競馬場・芝2400mのコースレコードは2分24秒50。香港の歴代賞金王ヴィヴァパタカが、07年に香港チャンピオンズ&チャターカップでつくった記録です。

香港ヴァーズの一次登録について

香港国際競走の一次登録の締め切りの時期は、毎年10月半ばから後半にかけて。香港カップを含めた香港国際競走4つのレースから、出走したい第一希望と第二希望を選んで登録することができます。

一次登録の登録料は無料です。毎年、日本からも多くの馬がエントリーしています。

ちなみに、2017年の香港ヴァーズに一次登録したのは、10ヶ国から76頭。最も登録頭数が多かったのは、日本の20頭です。そのほかに10頭以上の登録があった国は、香港の14頭、イギリスの11頭でした。

また、仮に一次登録が締め切られた後でも、追加登録の登録料も賞金総額の1%(2017年の香港ヴァーズの場合は、18万香港ドル=およそ250万円)を支払えば、11月後半まで追加登録が可能です。

香港ヴァーズの出走条件とは!?

香港ヴァーズの出走条件は、3歳以上。セン馬も出走は可能です。

登録馬の中から香港ジョッキークラブが選出を行い、その招待を受諾した馬が出走可能になります。フルゲートは14頭です。

香港ヴァーズの遠征費用

香港ヴァーズを含めた香港国際競走では、出走馬の輸送費と関係者の渡航費を香港ジョッキークラブが負担をしてくれます。こうしたサポートがある点も多くの日本馬が香港国際競走に挑戦する大きな要因と言えるでしょう。

香港ヴァーズの日本馬の挑戦歴史

日本馬による香港ヴァーズの挑戦は、第一回目の94年から始まります。その年はエイシンテネシーが出走して4着に敗れました。

90年代は4頭が挑戦して勝利することができなかった日本馬でしたが、2001年にステイゴールドが初めて香港ヴァーズに優勝します。ロングスパートから逃げ込みを図ったイギリスのエクラールをゴール寸前できっちりと差し切った勝利は、ステイゴールドにとってキャリア50戦目の引退レースで悲願のG1初優勝。またこの勝利は内国産馬による海外G1初制覇でもありました。

05年にはシックスセンスが2着、翌06年には菊花賞馬ソングオブウインドが4着に好走。ジャガーメイルは08~12年に4回出走して3着、4着、4着、2着に入るなど日本馬の善戦が見られましたが、勝利に手が届かない時期が続きました。

日本馬に2度目の優勝がもたらされたのは、16年。サトノクラウンが自身初のG1制覇を海外で飾ります。直線で完全に抜け出していたアイルランドのハイランドリールを、馬群から一頭だけ追いかけたサトノクラウンが鮮やかに交わし去って先頭でゴール。まさに15年前に勝利したステイゴールドのゴール前を彷彿とさせるシーンでした。

香港ヴァーズの攻略情報

ここからは、香港ヴァーズの馬券攻略ポイントを探っていきましょう。

香港ヴァーズは荒れやすい!?香港ヴァーズのレース波乱度

2017~2008年の過去10年における1~3着までの人気を見てみましょう。

1着 2着 3着
2017 1人気 3人気 4人気
2016 4人気 1人気 3人気
2015 2人気 1人気 4人気
2014 1人気 3人気 6人気
2013 5人気 1人気 4人気
2012 4人気 12人気 2人気
2011 4人気 6人気 2人気・8人気
2010 2人気 5人気 1人気
2009 3人気 1人気 10人気
2008 1人気 3人気 2人気

過去10年で1番人気と4番人気が3勝ずつを挙げています。2着は1番人気が4回でトップになっていて、1番人気の連対率は70%と高めです。なお、過去10年で1番人気になったのは、すべてヨーロッパ調教馬でした。

7番人気以下の人気薄が勝ったケースは、過去10年ではゼロ。3着までに入ったのも3回だけで堅い決着が多い印象です。

香港ヴァーズの斤量の決め方・有利な斤量は!?

香港ヴァーズの斤量は馬齢定量です。4歳以上の牡馬が126ポンド、北半球産の3歳牡馬が121ポンド、南半球産3歳牡馬が111ポンド。牝馬は4歳以上牝馬が122ポンド、北半球産3歳牝馬が117ポンド、南半球産3歳牝馬が107ポンドになります。

これをキロ換算した表記では、4歳以上牡馬が57キロ、北半球産3歳牡馬が55キロ、南半球産の3歳牡馬が50.5キロになり、牝馬は4歳以上が55.5キロ、北半球産3歳が53キロ、南半球産3歳は48.5キロとなります。

次に2017~2008年の過去10年における1~3着までの性齢を見てみましょう。

1着 2着 3着
2017 牡5 牡4 牡5
2016 牡4 牡4 牡4
2015 牡3 牡5 牡3
2014 牡4 セン6 セン5
2013 牡5 牝4 牡7
2012 セン6 牡8 牡4
2011 牡5 セン7 牡4・セン5
2010 牡4 牡4 牡5
2009 牝3 牡5 セン7
2008 牡6 セン5 牡4

過去10年の勝利数では、4歳、5歳が3勝ずつ挙げていて、3歳と6歳が2勝で、6歳までほぼまんべんなく勝利馬が出ています。

3歳は牝馬を含めての2勝で、他の香港国際競走(香港カップ、香港マイル、香港スプリント)に比べて活躍が目立ちます。距離が延びることで、古馬との斤量差が大きくなっているのが、理由の一つでしょう。

香港ヴァーズで有利な脚質は!?

2017~2008年における香港ヴァーズ優勝馬のラスト400mでのポジションは、

・1~3番手…2勝

・4~6番手…3勝

・7~9番手…4勝

・10番手以下…1勝

脚質にも大きな偏りは出ていませんが、先行、差しが優勢、追い込みがやや劣勢な傾向が見られます。08年のドクターディーノや13年のドミナントのように、レース序盤は最後方にいたケースもあり、最後の直線を迎えるまでには、ある程度のポジションまで押し上げておく必要がありそうです。

過去10年でラスト400mを先頭で通過して優勝したのは、17年のハイランドリールのみですが、道中は2番手でレースを進めていました。単純な逃げ切りというのは出ておらず、逃げ馬にとっては厳しいデータです。

香港ヴァーズで内枠・外枠のどちらが有利!?

香港ヴァーズが創設された創設された94年からの枠ごとの成績です。

1着 2着 3着
1 0回 5回 1回
2 2回 1回 3回
3 3回 3回 1回
4 4回 1回 2回
5 1回 2回 1回
6 1回 1回 2回
7 3回 3回 4回
8 1回 1回 2回
9 4回 1回 1回
10 1回 3回 3回
11 0回 1回 3回
12 3回 1回 0回
13 0回 0回 2回
14 1回 1回 0回

優勝最多は、4番と9番の4回で、3番、7番、12番が3回で続きます。2着は最多が5番の4回で、2番目に多いのが6番の3回です。連対数は3番と7番の6回が最も多く、真ん中あたりの枠が好成績を残しているものの、データに大きな偏りはありません

シャティン競馬場の芝2400mは第4コーナー付近からスタートして、最初のコーナーまでは直線がおよそ500mあります。出走馬にヨーロッパの馬が多いことから、ペースは最初からスローになりがちで、枠による有利不利は出にくいのかもしれません。

日本馬の香港ヴァーズでの相性は?

日本馬は2017年までにのべ20頭が出走して、ステイゴールドとサトノクラウンが挙げた2勝があります。2着はシックスセンスとジャガーメイルによる2回、3着はジャガーメイル、トーセンバジルによる2回です。

優勝回数は他の香港国際競走と比べても多くはありませんが、3着以内の複勝率は30%でまずますの数字を残しています。

注目したいのは、出走した20頭のうち、G1未勝利馬の割合が高かったことです。G1馬の出走は、ソングオブウインド、ジャガーメイル(2012年以降の2回)、ヌーヴォレコルト、キセキの5回だけでした。

暮れの大一番、有馬記念に近い開催時期を考えれば、バリバリの一線級が遠征することがない中でのここまでの実績ですから、日本馬との相性は決して悪くないと言えるでしょう。

その一方では、G1では少し足りない日本馬たちにとって、G1タイトルを手に入れる格好のチャンスの場でもあるのです。

また、日本馬との相性とは少し話がズレますが、ジャパンカップから香港ヴァーズへ向かう馬にも注意が必要です。過去にはドイツのボルジア、日本のステイゴールド、イギリスのフェニックスリーチ、同じくイギリスのウィジャボードが優勝。そして、12年にはイギリスのレッドカドーとジャガーメイルがワンツーを達成していました。

香港ヴァーズに強い国とは!?

香港ヴァーズは、2017年までの24回で最も多く勝利している国がフランスの10勝です。それに続くのがイギリスの8勝。以下に日本、香港、アイルランドが2勝となっています。

ここまではヨーロッパ調教馬が24回中20回優勝して、断然の強さを見せています。

近年の香港国際競走で強さを見せている地元の香港馬ですが、この距離では苦戦しています。過去10年で3着以内に入ったのは、13年優勝のドミナントを含めてわずかに4頭だけです。

香港では短い距離ほど層が厚く、2400mの距離を得意にする馬が少ない上に、おしなべてトップクラスは香港カップの方に出走するからです。17年の1着賞金で見ると、香港カップが香港ヴァーズよりも、およそ5700万円も高い訳ですから、オーナー心理を考えれば当然の流れです。

まとめ 香港ヴァーズは人気サイドから確実にものにする

香港ヴァーズは1番人気が高い連対率を誇り、信頼度が高いレースです。波乱は望み薄なので、無理をせずに堅い馬券でもしっかりと的中させておきたいところです。

軸に据えたいのは、ヨーロッパからの遠征組で前評判の高い馬です。スローペースになりやすいレースでもあるので、最後の瞬発力を活かせるタイプが理想です。一方で、逃げや追い込みといった極端な脚質の馬が連下までと割り切るのが良さそうです。

日本は勝率でヨーロッパの馬にかないませんが、馬券圏内に入る確率は決して低くありません。G1馬の参戦が少ないことから、極端に人気していなければ、押さえておいて損はないでしょう。

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