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馬体重の基礎知識

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川田 信一
川田 信一
1978年、東京都出身。単撃理論の提唱者・ 趣味で始めたメルマガが、人気薄の単勝を的確に当てることで評判に。わずか半年で2,000人を超える読者が口コミだけで集まる。グリグリの人気馬を迷わず消し、穴馬の単勝を的中し続けている生粋の単勝馬券師。

こんにちは。競馬予想家の川田信一です。

2012年に『見るだけで「単勝」が当たる“単撃”リスト(東邦出版)』という著書を上梓。以降も積極的に競馬書籍を出版し、ウェブやメルマガなどで活動しております。

数多ある予想ファクターの中で、ファンの注目度が低いファクターは何かご存知でしょうか?

公式に発表されており、誰でも目に見えてわかるファクターは、ファンに注目されやすい。具体的にいえば、前走着順、人気、時計、それに騎手、などは素直にオッズに反映されるファクターです。また、調教、血統、生産牧場、コース適性なども、わりに注目している人が多い。これらの要素にひとつでも買える材料がある馬は、穴人気を集めます。

しかしJRAが公式発表しているにも関わらず、注目度が低いファクターに『馬体重』があります。

大きな馬もいれば、小さい馬もいる。あまりレース結果と関係ないように思うかもしれませんが、馬体重は意外に馬券につながる要素なのです。しかも注目度が低いのでオイシイ配当になりやすい。

今回は、馬体重について考察していきたいと思います。

馬体重とは!?

馬体重の計測方法と発表時間

レース当日、競走馬はトレーニングセンターから競馬場へ輸送されます。競馬場に到着すれば、すぐにレースに使えるわけではなく、発走60分前までに装鞍所に入る必要があります。

装鞍所では、まず競走馬に取り違いがないか(過去には地方競馬で間違って別の馬がレースに出走したケースもあった)を確認。その後で、蹄鉄の検査や、馬の健康状態のチェックなどを行ない、その後に装鞍所で馬体重を確認します。ここで検量した馬体重が、JRAから発表されます。

またGⅠレースに限っては、調教後の馬体重発表も行われます。これは調教が終わった後に、厩舎スタッフがトレセンにある体重計で計量を行なってJRAへ申告、その数字が発表されます。レース当日の輸送を考慮して馬を仕上げるので、調教後馬体重はレース当日馬体重よりも重く出ることが多いようです。

また、JRAが発表する馬体重は2キロ刻みになっています(地方競馬は1キロ刻み)。これはJRAの体重計の仕様に加えて、昔からの慣習である2キロ刻みでの発表に従っているためです。糞尿の排泄により馬体重は1~2キロは変動するので1キロ単位の変動をあまり気にする必要はないといわれています。

競走馬の平均・最高・最低馬体重

2015年~17年の3年間の競走馬の平均馬体重は470キロ。約7割の競走馬は、440キロ~499キロの範囲内の馬体重でレースに出走しています。440キロ以下なら小型馬、500キロ以上なら大型馬ということができます。

JRA最高体重の記録を持っているのはショーグンという馬で、2015年1月17日に640キロを記録しました。このショーグンは出遅れ癖のひどい馬でしたが、パワフルな末脚を持っており、ダートの条件戦で活躍しました。ちなみ最高馬体重での勝利記録を持っているのもショーグンで、626キロでの勝利でした。

JRA最低馬体重記録は、2011年4月9日のグランローズ330キロ。競走馬の育成技術が向上し、小さい馬は年々少なくなっていたのですが、このグランローズが37年ぶりに最低馬体重記録を更新しました。ちなみにグランローズの戦績は、デビューから4戦して、すべて1着から3秒以上離されて大敗しています。

ショーグンのように550キロを超えるような超大型馬は不器用さが目立ちます。一本調子な走法で、パワーで押し切るタイプになりやすい。

一方、グランローズのような400キロを切るような超小型馬はそもそもの競走能力が足りないケースが多い。2015年~2017年の間に、400キロ未満の馬はのべ1127走していますが、勝った馬はわずか15頭(勝率1%)でした。

馬体重の増減とは!?

競走馬は生き物なので、前走と今走では馬体重の増減があります。

飼葉をたくさん食べれば体重は増えるし、少食だと体重へ減る。調教が軽ければ体重は増えるし、ハードトレーニングだと体重は減る。このあたりは人間と同じです。

競走馬特有の馬体重の増減理由には、いわゆる輸送減りもあります。競走馬は繊細な動物なので、トレセンから競馬場への輸送で汗をかきます。この輸送で10キロ以上体重を減らすような馬もいます。そのため厩舎スタッフは、輸送を考慮して競走馬を仕上げます。また競走馬は糞尿の量も多いため、ボロをしただけでも数キロ減るといわれています。

もっとも好走率が高いのは、前走から±3キロ以内の馬で、2015年~2017年の複勝率は22%。また±9キロ程度の馬体重変動でも複勝率は21%程度あります。もちろん競走馬ごとに増減の事情は様々ですが、大きな視点でみると、一桁キロ程度の変動はあまり気にしなくてよいようです。

馬体重の攻略法

馬体重別の成績!?大きい馬が走る!?

一般的に、ほとんどのスポーツは身体の大きい選手が有利です。格闘技は無論のこと、陸上競技や球技でも、トップクラスの選手はその多くが大きな身体をしています。もちろん、身体が小さくても活躍する選手もいますが、大きな視点でみれば身体が大きな選手の方が活躍する確率は高いといえます。

じつは競走馬に関してもまったく同じです。下表に競走馬の馬体重別成績をまとめてみました。

馬体重 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収
~399kg 1% 4% 6% 30% 41%
400~419kg 4% 8% 13% 52% 57%
420~439kg 5% 11% 17% 64% 66%
440~459kg 6% 12% 19% 73% 72%
460~479kg 7% 14% 21% 77% 74%
480~499kg 8% 15% 23% 72% 75%
500~519kg 9% 17% 25% 80% 75%
520~539kg 9% 17% 25% 72% 75%
540~ 10% 16% 24% 73% 79%

※2015年~2017年の集計結果

馬体重が400キロ未満の小さな馬は勝率1%。400~419キロでも勝率4%。そこから馬体重が増えるにつれて勝率が上がっていき、もっとも勝率が高いのは540キロ以上の馬で10%。馬体重と競走成績に綺麗な相関関係があることがわかると思います。

大きな馬ほど走る確率が高い。これは競馬の真実です。なぜ大きな馬の好走率が高いかというと、一般的に、大きな馬は筋肉量が多く、ストライドも大きく、トップスピードも速くなりやすいため。似たような成績の馬がいて、どちらを買うか悩んだら、大きな馬を選ぶのが正解なのです。

とくに馬体重が結果につながりやすいのは新馬戦です。459キロ以下の馬の複勝率が20%未満なのに対し、460~539キロの馬の複勝率は25%を超えています。予想材料の少ない新馬戦、体重で買うという戦略はアリです

もうひとつダート戦も馬体重と結果の相関関係が強いレースです。芝に比べてパワーを要するので、ダート戦は筋肉量の多い大型馬が活躍する確率が高い。こちらも459キロ以下の馬の複勝率が20%を大きく下回っている一方、460キロ以上の馬の複勝率は20%超、さらに500キロ以上に限定すると複勝率は25%近くあります。

大幅減・大幅増は走らない!?

先ほど一桁キロ程度の増減は気にする必要はないと書きましたが、二桁の変動がある馬となるとさすがに影響が出ます。

下表は馬体重の増減別の成績をまとめたものです。

馬体重 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収
~-20kg 4% 5% 8% 82% 48%
-19~-10kg 6% 11% 17% 63% 65%
-9~-4kg 7% 14% 21% 77% 74%
-3~+3kg 7% 15% 22% 74% 74%
+4~+9kg 7% 14% 21% 71% 73%
+10~+19kg 6% 12% 19% 64% 74%
+20kg~ 5% 10% 15% 69% 62%

※2015年~2017年の集計結果

10キロ以上の増減になると成績が低下し、20キロ以上の増減となるとさらに成績は下がります。馬体重の大幅増・大幅減は疑ってかかるのが正解です。

なかでも危険なのは、半年以上の休養明けで、なおかつ10キロ以上の馬体減。本来、長期間の休養を取ると競走馬の体重は増えるものなの。大幅減で出走してくる馬は、調整に失敗していたり、調子が悪いケースがあるからです。

斤量と馬体重の関係

体重50キロの華奢な人が10キロの荷物を背負うのと、体重80キロのガタイのいい人が10キロの荷物を背負うのでは、どちらが楽でしょうか? 常識的にいえば80キロの方が楽ですよね。

競走馬の斤量に関しても同じことがいえます。同じ57キロであっても、小さな馬と大きな馬では斤量の影響が違うのです。

下表は斤量を馬体重で割って、その比率を示したものです。

斤量 勝率 連対率 複勝率 単回収 複回収
体重比~11.0% 8% 16% 23% 76% 75%
体重比~11.5% 8% 16% 23% 75% 74%
体重比~12.0% 7% 14% 21% 76% 74%
体重比~12.5% 6% 12% 19% 70% 69%
体重比12.5%~ 5% 10% 16% 60% 65%

※2015年~2017年の集計結果

馬体重に対して斤量が11.0%以下の馬(例:馬体重500キロ、斤量54キロ、など)の複勝率が23%あるのに対し、体重比が上がるにつれて複勝率が下がっていき、体重比12.5%以上になると16%にまで落ち込みます。

同じように、体重比が低い方が回収率は高く、体重比が高くなるにつれて回収率は下がっていきます。どちらを狙うべきは説明するまでもないでしょう。

レース前に割り算をして、細かい体重比を計算する必要はないと思います。JRAの斤量幅は、48キロ~59キロという狭い範囲内に収まります。つまり馬体重が大きければ、自動的に体重比は小さくなります。

斤量の体重比という観点からも、馬体重が大きな馬は有利なのです。

馬場状態と馬体重の関係

500キロを超えるような大型馬はパワー型であることが多い。つまり、芝の重・不良馬場のような、力のいる馬場で好走するケースが多くなる。

一般的にはこう言われていたのですが、データは真逆に出ました。

≪500キロ以上の競走馬 馬場状態別成績≫
芝・良  複勝率25%
芝・稍重 複勝率24%
芝・重  複勝率23%
芝・不調 複勝率18%

芝のレースで大型馬の成績がいいのは良馬場で馬場が悪化するにつれ成績が低下するのです。

なぜこのような結果が出るのか? それは大型馬の跳びの大きさに起因していると考えられます。大型馬はパワータイプであることが多いのですが、それと同時に跳びも大きくなりやすい。跳びが大きな馬というのは、馬場が渋るとノメるので力を発揮しづらい。そのため、馬場が悪化すると成績も悪化するようです。

ちなみにダートの大型馬は、セオリーどおり力のいる良馬場や稍重馬場の成績が優秀でした。

≪500キロ以上の競走馬 馬場状態別成績≫
ダ・良  複勝率25%
ダ・稍重 複勝率26%
ダ・重  複勝率25%
ダ・不良 複勝率22%

まとめ

儲けたいなら大型馬を狙え!

ここまで馬体重に関して考察してきましたが、儲けたいなら大型馬を狙え!という結論に達しました。

馬体重の馬券作戦というと、その増減ばかりが取り上げられていました。

たしかに、馬体重の増減から激走馬が見抜けるケースもあります。しかし前走から馬体重が増えたか減ったかという小さな差異よりも、その馬のポテンシャルを示すことが多い、馬体重そのものに注目した方がオイシイ馬券につながります。

馬体重が競走馬のポテンシャルを表わすというのは、GⅠレースの勝ち馬の体重を調べればわかります。

≪2015年~2017年 GⅠレース優勝馬の馬体重分布≫
400キロ~419キロ 1頭
420キロ~439キロ 6頭
440キロ~459キロ 2頭
460キロ~479キロ 17頭
480キロ~499キロ 19頭
500キロ~519キロ 9頭
520キロ以上    14頭

440キロ以下の小型馬のGⅠ優勝は7頭だけ。それに対して480キロ以上の馬のGⅠ優勝は42頭。その違いはあきらかです。

迷ったら大型馬

この格言を覚えておいてください。

なお、これは私の経験則ですが、差し・追込脚質の大型馬や、夏場の大型馬はやや減点が必要です。

大型馬は不器用な馬や大跳びの馬が多いので、馬群を縫うようなレースが苦手であることが多い。後方に構えていると不発のケースがあります。

夏場に関しては、小回りの競馬場が多いのと、調整の難しさが原因だと思います。小型馬は仕上りが早いのですが、大型馬は仕上げに時間がかかります。

大型馬を買うときは、この2点を留意しておいてください。

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