レース見解

天皇賞(秋)2018のレース回顧

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川田 信一
川田 信一
1978年、東京都出身。単撃理論の提唱者・ 趣味で始めたメルマガが、人気薄の単勝を的確に当てることで評判に。わずか半年で2,000人を超える読者が口コミだけで集まる。グリグリの人気馬を迷わず消し、穴馬の単勝を的中し続けている生粋の単勝馬券師。

10月28日(日)に東京競馬場で行われた第158回天皇賞(秋)(東京芝2000m・G1)は、C.ルメール騎手騎乗の2番人気レイデオロが優勝した。勝ちタイムは1分56秒8(良)、これは2011年にトーセンジョーダンが記録した1分56秒1のレコードに次ぐ走破タイム。なお、ダンビュライトは馬場入場後に放馬し、疲労が著しいと判断されたため競争除外となっている。

レイデオロはノーザンファーム生産の4歳牡馬で、美浦・藤沢和雄調教師の管理馬。父キングカメハメハ、母ラドラーダ(母の父シンボリクリスエス)、母の近親にはディープインパクトやゴルトブリッツがいる血統。

2着には4番人気のサングレーザー、3着には6番人気のキセキが入り、4歳馬が上位を独占する形となった。また、1番人気に支持されたスワーヴリチャードは発馬直後の接触が響き、見せ場なく10着に敗れている。

ここからは上位入選馬を中心に各馬の好走理由や敗因を探りつつ、次走への狙いなども立てながらレースを振り返ってみよう。

天皇賞(秋)2018の各馬の勝因・敗因・次走展望

1着:レイデオロ

東京優駿(東京芝2400m・G1)以来、2つ目のG1タイトル獲得となったレイデオロだが、久々に日本ダービー馬が古馬G1で優勝する姿を見ることができた。それ以前となると、オルフェーヴルが制した2013年有馬記念(中山芝2500m内・G1)まで遡らなければならない。

近年はクラシックで燃え尽きてしまう馬も多いなか、古馬になってからも活躍できる馬作りを意識しているあたりに藤沢和雄調教師の信念を感じることができる。また、天皇賞(秋)は現行コースになってから4勝目、通算でも6度目の勝利という相性のいいレースで、藤沢厩舎の健在ぶりを示したとも言えるだろう。

レイデオロについて振り返ると、まずは鬼門と言っても過言ではないオールカマー(中山芝2200m外・G2)からのローテーションで優勝したことに驚かされた。1981年ホウヨウボーイ、1963年リュウフォーレル、1956年ミッドファーム、過去にオールカマーから臨んで天皇賞(秋)を制した馬は3頭いたが、いずれも天皇賞(秋)がまだ芝3200mで行われていた頃の話だ。

なぜオールカマー組が不振なのかと問われれば、ローテーションよりも求められる適性の違いによるところが大きいだろう。つまり、レイデオロという馬を称するならば、苦手条件のない、超一流のオールラウンダーという表現が最適に思える。

課題らしい課題といえば「スタートの遅さ」くらいだったものの、それすらも克服しつつあり、いよいよ名馬として完成の域に入ってきたか。来年も現役続行という話もあるため、次走はジャパンカップ(東京芝2400m・G1)か有馬記念、どちらか一戦になるとの報。ジャパンカップにはC.ルメール騎手騎乗予定のアーモンドアイが控えているため、有馬記念が有力だろうか。

どちらにせよ、天皇賞(秋)での勝利は今後の競馬界を担っていく存在になることを確約させるようなものだった。海外含め、さらなる舞台での活躍にも引き続き期待していきたい。

2着:サングレーザー

札幌記念(札幌芝2000m・G2)では、マカヒキ、モズカッチャンといったG1馬を相手に接戦を制したサングレーザーだったが、天皇賞(秋)でも数々のG1馬がいるなかで2着に善戦してみせた。

レイデオロを目標にする形でレースを進め、上がり3ハロンはメンバー最速となる33秒4という末脚を披露。「残り200mで差せるかと思った。」と新コンビを組んだJ.モレイラ騎手がレース後に語っていたが、裏を返せば上がり最速の末脚を駆使していたにもかかわらず、ラスト200mまではレイデオロとの差がなかなか詰まらなかったとも受け取れる。

思い返せば、スワンステークス(京都芝1400m外・G2)、読売マイラーズカップ(京都芝1600m外・G2)、札幌記念、いずれも平坦コースで行われる重賞でしか勝利していないように、直線に坂のあるコースでは少し後手を踏んでしまうのだろう。

それでも、近走の充実ぶりを考えれば急坂コースを克服する日も遠くないかもしれない。ディープインパクト産駒のなかでも晩成型の血統なので、まだまだ引き出せていない能力はありそうだ。

3着:キセキ

戦前、スローペース濃厚と囁かれていた天皇賞(秋)を、締まったペースでレースを作り、見応えのあるG1らしい展開に仕立て上げたキセキは陰の立役者。

キセキ自身もスローペースの瞬発力勝負では分が悪いため、川田将雅騎手の強気な競馬が功を奏した。59秒4-57秒4という淀みのない流れの中で3着に残るのだから、並み居る4歳世代のなかでクラシックホースになった実力は本物だろう。

父ルーラーシップは5歳でG1初制覇を果たしている晩成型なので、キセキも父同様に先々まで期待できるはず。ただし、小回りコースを苦手とする特徴も引き継いでいる印象を受けるので、勝ち負けを期待するならば直線が長いコースでの持続力勝負か。沙田芝2000mで行われる香港のG1ならば面白い存在になるかもしれない。

4着:アルアイン

今年の天皇賞(秋)は1~4着までを4歳馬が独占したが、アルアインも皐月賞馬としての威厳は示せたのではないだろうか。

母ドバイマジェスティのアメリカ血統が色濃く出ているのか、ディープインパクト産駒にしてはスパッと切れる脚を使えないタイプ。東京のような瞬発力勝負になりやすいコースで好走するのは難しいが、今回は淡々とレースが流れたことで持ち前の持続力を活かせる形になった。

1分57秒8のレースレコードとなった皐月賞(中山芝2000m内・G1)を制しているように、ディープインパクト産駒らしく高速馬場は得意。つまり、アルアインの場合は、走破時計が速く、末脚勝負にならないレースならば狙いが立つ。

10着:スワーヴリチャード

同世代のクラシックホースたちを差し置いて1番人気に支持されたスワーヴリチャードだったが、結果として4歳馬が上位を占めるなかでの大敗となり、水をあけられる形になってしまった。

最大の敗因はスタート直後にマカヒキと接触し、怯んだ影響で最後方からの競馬を余儀なくされたことだろう。大阪杯(阪神芝2000m内・G1)の時のように、スローペースであればリカバリーすることも可能だったかもしれないが、高速馬場でレースラップも緩むことなく流れてしまっては動くに動けず万事休す。最後は騎乗したM.デムーロ騎手も追うのを諦めてしまっていたように参考外の一戦だろう。

ただし、今回の大敗は次走に向けて疲れを残さないようにしたとの見方もできるが、あまりにも見せ場のなかったレースぶりを考えると、そもそもハーツクライ産駒を高速馬場で評価すること自体が間違っていたようにも思えた。やはり本質的には時計の掛かる持続力勝負でこそのタイプなので、次走予定しているジャパンカップでも高速馬場が残っているようならば過信は禁物かもしれない。

まとめ

今回の天皇賞(秋)の結果を簡単にまとめるならば、高速馬場かつ持久力戦での末脚勝負。

東京競馬場で時計が速い開催となると、ディープインパクト産駒を素直に評価するべきで、キングカメハメハ系で上位に来た2頭に関しても、レイデオロはディープインパクトと同じWind In Her Hair牝系、キセキは母父がディープインパクトと、その存在感を示していたのではないだろうか。

近年の天皇賞(秋)は、ジャパンカップなどの前哨戦的な位置付けに成り下がることも多いが、今年は少頭数ながら非常に見応えのあるレースとなった。

今回上位に入選した馬たちは、今後も中距離路線で活躍していく存在であることに間違いはなく、人気を裏切る形になってしまったスワーヴリチャードも4歳馬ということを考えれば見限り早計だろう。

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