レース回顧

マイルチャンピオンシップ2018のレース回顧

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川田 信一
川田 信一
1978年、東京都出身。単撃理論の提唱者・ 趣味で始めたメルマガが、人気薄の単勝を的確に当てることで評判に。わずか半年で2,000人を超える読者が口コミだけで集まる。グリグリの人気馬を迷わず消し、穴馬の単勝を的中し続けている生粋の単勝馬券師。

11月18日(日)に京都競馬場で行われた第35回マイルチャンピオンシップ(京都芝1600m外・G1)は、W.ビュイック騎手騎乗の5番人気ステルヴィオが勝利。勝ちタイムは1分33秒3(良)で、比較的時計の出やすい馬場状態だった割にタイムは伸びなかった。

勝ったステルヴィオはノーザンファーム生産の3歳牡馬で、美浦・木村哲也厩舎の管理馬。父ロードカナロア、母ラルケット(母の父ファルブラヴ)、母の近親にはクランエンブレムがいる血統。

レースは7枠から好発を決めたアエロリットがスンナリ行くかと思われたが、R.ムーア騎手は内の出方を窺う様子でなかなか前に行こうとしない。一方、内枠からスタートを決めたロジクライとアルアインも積極的にハナを主張せず、2頭ともハミを噛んだり、口を割ったり、スローペースで折り合いに苦戦していた。結局、痺れを切らしたアエロリットが400m付近で先頭に立ち、緩いペースでレースを引っ張ることになる。

この日の京都芝コースは、内枠やラチ沿いを確保した馬、先行馬に分があり、後方から外を回しているようでは間に合わないイン有利の馬場状態。マイルチャンピオンシップも1枠1番→1枠2番→2枠3番と、内枠から3頭で決まっており、立ち回りの巧さを問われる結果になったのではないか。

1枠1番という絶好枠を引いていたステルヴィオは、いつもの末脚に賭ける戦法を取らず、枠なり&出たなりのスムーズなレース運びを選択できたことが最大の勝因だろう。2着に入った3番人気のペルシアンナイトは、勝ったステルヴィオを追いかけるように一列後ろでレースを進めたが、勝ち馬も簡単には進路を開けてくれなかった。4番人気のアルアインは、久しぶりのマイル戦でも先行できる脚力を見せ、持ち前のしぶとさを活かして3着に粘り込む形に。

なお、1番人気の支持を集めたモズアスコットは、後方からの競馬を選択したため、レースの流れに乗ることすらできず13着と大敗。2番人気アエロリットは、いつもの強気な先行策を取れない消化不良の内容が響き12着に敗れている。

ここからは各馬の好走理由や敗因を探りつつ、次走への狙いなども立ててみよう。

マイルチャンピオンシップ2018の各馬の勝因・敗因・次走展望

1着:ステルヴィオ

ステルヴィオと初コンビを組むことになったW.ビュイック騎手はJRA・G1初勝利。ゴドルフィンの主戦を務める若きホープの躍進は止まらず、ドバイ、香港、イギリス、アイルランド、フランス、アメリカ、そして日本、2018年に制したG1レースは実に7ヵ国にも及ぶ。

W.ビュイック騎手は、過去のマイルチャンピオンシップでも、2014年エキストラエンド(12番人気5着)、2013年ドナウブルー(10番人気5着)と人気薄での激走を演出しており、レース相性の良さを漂わせていた。

話をステルヴィオに戻すと、過去に騎乗したC.ルメール騎手とC.デムーロ騎手は「1600mでは短い、2000mくらいがベスト。」と口を揃えてコメントを出していたが、プラス10キロの馬体重が示していた通り、まだまだ伸びしろのある3歳馬で成長の余地を残している。良い意味での先入観の無さが、いまのステルヴィオに適した固定概念に捕らわれない柔軟なレースプランを選択することができたのではないか。

ただし、マイルチャンピオンシップを勝利したとはいえ適性距離は1600mか?と問われると疑問が残る。もともと安田記念と違ってペースが緩みがちなマイルチャンピオンシップは中距離質の馬が走りやすいレースでもあるのだ。

今年の場合は確固たる逃げ馬が不在で、後半の方が0秒9も速い47秒1-46秒2という後傾ラップ。過去10年、同様に後傾ラップを刻んだマイルチャンピオンシップは、2015&2013&2012&2009年の4回で、うち3回はトーセンラー、サダムパテック、カンパニーと距離短縮で臨んだ馬が勝利している。また、残りの1回も後に天皇賞(秋)や香港カップを勝つことになるモーリスだった。

ステルヴィオの場合もベストは1800mくらいで、1600~2000mまでは展開次第で対応できるイメージで良いだろう。

2着:ペルシアンナイト

昨年の覇者ペルシアンナイトは、わずかにアタマ差及ばず連覇を逃した。鞍上のM.デムーロ騎手も、今秋はG1での惜敗が続いており、マイルチャンピオンシップも実に惜しい競馬だった。

立ち回りは京都外回りのセオリーとも呼べる内回り合流地点でのイン差しを狙う形ではあったが、前を行くステルヴィオの手綱を取っていたW.ビュイック騎手も簡単には進路を譲らず、窮屈な競馬を強いられる。もともと馬の間に入ることを躊躇うペルシアンナイトにとっては、非常に苦しい展開になってしまった。

また、昨年のマイルチャンピオンシップの走破時計が1分33秒8(稍)、今年が1分33秒3(良)、そしてアーリントンカップを勝利したときが1分34秒1(良)、やはりペルシアンナイトもマイラーと呼ぶには時計が物足りないため、本質的にはステルヴィオ同様1800mくらいが適性距離となるのではないか。

3着:アルアイン

2017年シンザン記念以来、約1年10ヶ月ぶりのマイル戦となったアルアインではあったが、このメンバーであれば持ち前の先行力は健在で、展開的にも中距離質のレースになったため追走に苦労することは無かった。

レースぶりに関しては、非の打ちどころのない理想的な内容ではあったが、アルアインは追い出すと外へ外へとモタれる癖がネックなので、イン有利な馬場状態で行われるレースでは他馬に隙を与えがちになってしまう。つまり、先行力を活かして早めに押しきろうとしても、直線で内を閉められないのが最大の難点。

アルアインの狙いどころは非常に難しくて、高速馬場は得意でも上がり勝負では分が悪い、先行力はあっても一頭になると気が緩む、買ってはいけない条件自体は見えてきたので、あとは根気よく展開が嵌ることを待つしかないだろう。

12着:アエロリット

アエロリットは、45秒5-45秒8の安田記念で2着に好走し、46秒8-45秒5のヴィクトリアマイルでは4着と食い足りない内容。今回、47秒1-46秒2という走破時計のマイルチャンピオンシップであれば、12着と大敗するのも頷けるのではないだろうか。

ちなみに、近親のミッキーアイルがマイルチャンピオンシップを制覇したときのラップは46秒1-47秒0、やはり前傾ラップのキツイ展開になってこそ持ち味が活きる血統なので、アエロリットも逃げ馬としての利点を最大限に発揮させるのであれば、強気に逃げるイメージの沸かないR.ムーア騎手への乗り替わりはマイナス要素だったのかもしれない。

13着:モズアスコット

モズアスコットは、直線入り口での不利を騎手・陣営ともに敗因に挙げているが、そもそも1400mを熟せる当馬にとっては持ち味を削がれてしまう緩すぎるペースだった。

1分31秒3のコースレコードで走った安田記念の強さは疑いようがなく、とにかくマイルチャンピオンシップは時計も展開も何もかもが最初から向いていなかった。もちろん、大敗したのは接触した影響によるところが大きいが、仮に不利が無かったとしても勝ち負けまでは厳しかっただろう。

今回は度外視できる一戦ではあるので、次走以降での巻き返しは充分可能だろう。ただし、Frankel産駒ということを考えると、今回の敗戦で気性的な悪さが出てこないかが心配だ。

まとめ

マイルチャンピオンシップは、京都芝1600m外回りコースで行われる限り、3コーナーの上り坂でラップの緩む部分が生まれるのが最大の特徴。今年は、同じマイルG1と言っても安田記念との違いが何なのかを的確に理解できる結果になったのではないだろうか。

つまり、高速馬場でラップに緩みのない安田記念は1400mに強い馬が走りやすく、スローペースで後傾ラップになりやすいマイルチャンピオンシップは中距離質の馬が走りやすい。シンプルながら非常に重要なポイントなので、来年以降も肝に銘じておく必要がある。

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